2015年07月06日

button_15.jpg  中国電材市場 日系企業が相次ぎ積極投資

2015年07月06日 化学工業日報

 フラットパネルディスプレイ(FPD)の大型投資が相次ぐ中国に、日系化学・素材メーカーが熱い視線を向けている。プラントの新増設に加え、営業を強化する動きが本格化。有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料をはじめとした最先端の技術・製品を紹介しようとする企業も増えている。市場で存在感を高める中国メーカーに狙いを定め、活発な取り組みを繰り広げる各社の動向を追った。
(吉水暁、遠藤文康)
 「今年は勝負の年」「引き続き情報電子化学が業績に寄与してくるとみている」。液晶パネル向けのカラーレジストや薬剤を手掛ける三菱化学や住友化学の中国現地法人首脳らは、2015年の電子材料関連事業の見通しについてこう語り、総力を挙げて伸ばしていく姿勢を示す。住友化学は高精細化が進むFPD向けに高純度薬液を提供し、中国でも基盤を固めている。合肥市(安徽省)に工場を構え、重慶市でも新工場が商業運転が始まることもあり、大きな追い風になると期待する。
 経済成長が鈍化に転じたこともあり、中国での日系企業の"飯のタネ"は自動車関連ばかりが取りざたされるが、電機・電子関連に注目するメーカーも少なくない。液晶パネルなどFPD向けの製品供給は再び活況を呈している。
 中国各地で液晶パネル工場の新増設が計画・実施されていることが背景にある。京東方科技集団(BOE)は今春に重慶で第8・5世代の新工場が稼働入り。今後、数年間に限っても合肥、成都(四川省)、福州(福建省)など各市で最先端の第10・5世代を含めた新増設を予定する。
 現状、世界第3位である中国の液晶パネルの生産能力は来年に8000万平方メートルへ拡大する見込み。台湾を抜いて韓国に次ぐ地位に浮上する。中国政府による輸入液晶パネルに対する課税導入が議論されているうえ、高度な産業の誘致に熱心な地方政府が支援を行っていることも拍車をかける。過剰生産の声も聞こえるが、FPD市場は当面の間、右肩上がりを維持することに間違いはない。
 そうしたなか、中国重視に大きく舵を切ったのがJSR。昨年末には常熟市(江蘇省)に着色レジストなどの液晶材料を手掛ける工場の新設を公表。来年中の稼働を目指す。さらに高機能化を進める中国市場に対応、現地事業体制の抜本強化に踏み切り、「世界市場で急速にシェアを増やしつつある現地ディスプレイメーカーへのアプローチを重視している」(渡邉毅・捷時雅(上海)商貿有限公司董事長)。そのために本部を置く上海のほか北京、合肥、深ふらふら(広東省)に営業拠点を設けており、さらに増やす意向。
 また、現地企業へのアプローチで重視しているのが技術面のサポート。同社が蓄積してきた技術基盤を最大限に反映させるため本社との連携をこれまで以上に強めていく。4月からは現地法人が収益責任を持つ体制に移行しており、主体的な営業展開を通じ中国市場の開拓にまい進する。
 蘇州市(江蘇省)で微粉体の製造・販売を手掛ける綜研化学は、光拡散剤向けの供給が急拡大している。ここ5年で販売量は7〜8倍に拡大したという。「2003年の製造開始当初は日本市場向けが多かったものの、現在では大半が国内向けになった」と綜研化学(蘇州)有限公司の崔英総経理。海外勢ではサムスンディスプレイが蘇州で、LGディスプレイが広州市(広東省)で8・5世代の工場を稼働しているほか、BOEは10・5Gを立ち上げる予定。今年だけでも昨年比30%ほどの供給増を見込んでいる。しかし、価格競争も激化していることから、同社はプロセス自動化による効率性の改善や従業員の多能化を図り、生産効率の向上につなげていく構え。
 積水化学工業はモバイル向けを中心に、微粒子、シール剤、接合テープ、保護フィルムといったFPD周辺部材の関連製品が伸びている。韓国や台湾の拠点と連携し、さらなる需要獲得を急ぐ。日本合成化学も偏光板部材向けで光学用ポリビニルアルコール(PVOH)フィルムを展開中。「高機能の偏光板は中国市場ではまだ輸入品が多い」(今屋隆信・日之高(上海)商貿有限公司総経理)とみているものの、数年後の市場拡大に期待をかける。
 量だけでなく、質の観点からも中国FPDメーカーに接近を試みようとする企業も出てきた。その1つが新日鉄住金化学。液晶に続く新たな製品として、BOEなど中国のパネルメーカーが有機ELの量産化に取り組んでいることを受け、日本でも実績のある有機EL向けのリン光ホスト材料のサンプル出荷に本腰を入れていく。
 「研究開発と生産を同時並行で行う現地企業には早めのアプローチが欠かせない」と、新日鉄住金化学商貿(上海)有限公司の南部秀三郎総経理は指摘する。液晶材料で強みを持つJNCも、そこで培ってきたルートを生かして有機EL材料を提案する考えで、新たな収益源に育て上げようとしている
 ただ、中国FPDメーカーが材料の調達先として日系メーカーを頼る半面、「大手では内製化を着々と進めている」(市場関係者)ことは確か。引き続き中国で収益を得ていくには、それらを突き放すことのできる二歩も三歩も先を行く技術・製品を次々開発していくしか勝ち残りの道はない。より素早く相手のニーズをくみ取り先手を打っていくには、生産、営業に続き需要地に近い場所で研究開発体制をどれだけ構築できるかがカギを握る。

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