2013年11月19日

button_15.jpg  スマホの分解から判る、中国企業HiSilicon Technologiesの高い実力

 中国Huawei Technologiesの半導体子会社、HiSilicon Technologiesの躍進がすさまじい。

 同社が初めて大きな注目を浴びたのは、2012年2月にスペイン、バルセロナ市で開催された携帯電話関連の展示会「Mobile World Congress 2012」である。Huaweiが、ハイエンドのスマートフォン(スマホ)「Ascend D quad」を発表。このスマホにHiSiliconが開発したクアッドコアのアプリケーションプロセッサー「K3V2」が搭載された。

 さらに2013年4月にNTTドコモが2013年春モデルとして発売した「Ascend D2 HW-03E」では、ベースバンド処理用LSI(大規模集積回路)、RFトランシーバーICにもHiSilicon製のものが搭載された。

 各社の半導体を長年分析してきたある技術者(以下、解析協力者)は「ここまで完結したチップセットを提供できているのは、米Qualcomm、台湾MediaTek、中国Spreadtrum Communicationsぐらいのもの」と、HiSiliconの底力に驚嘆の声を上げる。

 しかも、Ascend D2では、NTTドコモの春モデルの中で唯一、LTEの「カテゴリ4」に対応した。投入時期だけで評価するなら、米Qualcommを追い越したことになる。

 ただし、HiSiliconの情報は少なく、実態は「謎」と言っていい。そこで日経エレクトロニクス編集部では、機器の分解を通じて実力に迫ってみた。

■ ほぼ最先端の製造技術を使用

 Ascend D2を分解すると、メイン基板と、マイクやバイブレーターなどを搭載したサブ基板の二つで構成されたすっきりとした設計であることが分かる。

 先に述べたようにスマホの核となる移動通信向けのチップがHiSilicon製で固められていることが分かる。周辺チップは主に米国半導体メーカー製だった。

 HiSilicon製のチップはどこで製造されているのか。パッケージを取り除き、ダイ(回路が焼き付けてあるシリコンウエハーチップ)を観察してみた。その結果、ベースバンド処理LSI、アプリケーションプロセッサー、RFトランシーバーICは、チップのコーナー形状から台湾積体電路製造(TSMC)で製造されたことが分かった。

 製造技術の世代は、ベースバンド処理LSIとアプリケーションプロセッサーが40nm、RFトランシーバーICが65nmだった。米NVIDIAのアプリケーションプロセッサー「Tegra 3」なども40nm世代で製造されていることから、ほぼ最先端に近い製造技術を使っているといえる。

 配線パターンを見た解析協力者は「非常にオーソドックスな作りをしている。技術的には、QualcommやMediaTekと遜色のないレベルにある」と評価する。

■ 開発のために大量の人材を確保

 LTE対応のベースバンド処理LSIを新興のHiSiliconが開発できることに対しては、「ベースバンド処理LSIの設計自体はそれほど難しくないため、驚くことではない」(解析協力者)とした。

 ただし、ベースバンド処理LSIは、移動通信事業者の基地局と相互接続を確保できる必要があることから、膨大な相互接続テストが必要で、ここが開発上のボトルネックになる。そのため、「これほど早いタイミングでLTEのカテゴリ4に対応できたのはすごい」(解析協力者)。

 相互接続テストを早める方法は、相互接続のための試験装置と人員を大量に導入して、試験を並行で進めることだ。このことから、HiSiliconが相互接続テストのために装置と人手を大量に確保していると推測できる。親会社であるHuaweiが移動通信基地局の大手企業であることから、そのノウハウを投入することも可能だろう。

 「HiSiliconは企業規模など情報をほとんど開示していないため、従業員数はベールに包まれているが、数百人規模でベースバンド処理LSIを開発しているのではないか」(解析協力者)と推測する。

■ 多数のソフトウエア技術者の影

 アプリケーションプロセッサーでは英ARMが、IPコアの設計データを特定の半導体プロセスに最適化するのに必要な情報をまとめたPOP(Processor Optimize Pack)というサービスを提供している。これを使えば、「誰でもある程度高性能なアプリケーションプロセッサーを製造できる」(解析協力者)。

 ところがHiSiliconがPOPを使っている様子はないため、解析協力者は「自社内で強力な実装チームを持っているのではないか」と推測した。ここでもやはり、数百人が設計業務などをしているとみられる。

 RFトランシーバーICではアナログとデジタルの最適設計が必要であることから、ノウハウの蓄積が必要である。解析協力者は「中国メーカーもここまで技術を蓄積したかというのが率直な感想だ」と語る。

 一方、電源管理ICはベースバンド処理LSI用とアプリケーションプロセッサー用共に110nm世代で製造されていた。委託先のファウンドリー(半導体チップの製造専門企業)は不明だった。

 「電源管理IC自体の設計はそれほど難しくないが、OS(基本ソフト)やアプリケーションソフトウエアなど全体を捉えて電源管理が必要なため、ソフトウエアの知識が必要だ。多数のソフトウエア技術者を抱えていると考えられる」(解析協力者)。

■ Huaweiと共に今後も躍進か

 以上から、HiSiliconが大量の半導体設計や通信系の技術者、ソフトウエアの技術者を雇用し、特定の半導体を集中的に開発している様が垣間見える。「欧州や日本の大手半導体メーカーがリストラを断行している現状を考えると、そうした技術者を雇用するのは難しくない」(解析協力者)。

 しかもHiSiliconが製造した半導体は基本的にHuawei製のスマホやタブレット端末、モバイルルーターに採用されるという経営上のアドバンテージがある。

 解析協力者は「かつての日本の総合電機メーカーが半導体製造部門までを擁して製品を作り上げていたのと同様の動きを、中国メーカーであるHuaweiが進めていると考えるとしっくりくる」という。今後、Huaweiの躍進に寄り添う形でHiSiliconはさらに力を付けていきそうだ。(日経エレクトロニクス 中道理)

(日本経済新聞2013年11月19日)



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